30年後の未来、30年前の今を私はどう振り返ることになるのだろう

小雨が降りしきる朝、愛犬と一緒に堤道を歩いていると、向こう側からオレンジのカッパに身を包んだ白いヘルメットの大柄な男性がキョロキョロしながら歩いて来た。

すれ違う際、その服装が消防隊のそれであることが見て取れた。

そう言えば、二、三日前にも消防署の人らしき人が堤道を歩いてたな…

そんなことを思ってると、今度は青いカッパに身を包んだ紺色のキャップを被った小柄な男性が同じようにキョロキョロしながら歩いて来る。

どうやら、その人も消防関係の人のようだ。

すると、その男性が私に近づいて来て言った。

実は行方不明の人の捜索をしてるんです。

74歳の男性で身長は160㎝、痩せ型の人です。

3日ほど前から行方不明なんです。

何か知りませんか?

そう言われても、そんな感じのお爺さんは近所に腐るほどいる。

認知症の方なんですか?と聞くと、そうではないとのこと。

一応、脳内検索をしてみるも参考になりそうな情報はヒットしてこなかった。

すみません、何も分かりません、ご苦労様ですと別れるしかなかった。

事件か事故か、はたまた家出か、もしくは…

考えても仕方のないことだが、自然とイロイロな思いが巡る。

ふと頭にひとりの老人が浮かんだ。

身長160㎝、瘦せぎす。

70代と思しき老人。

猫背。

その老人とは、愛犬の散歩中に二、三度すれ違っただけだ。

なのに印象に残ってるのは老人の抱えたボディバッグが私のとまったく同じだったから。

あそこのホームセンターで買ったんだな…まるかぶりはなんか照れくさいな…なんで照れくさいのかな…

何かに引っ張られるようにして歩いていく猫背を見送ったことを覚えている。

それにしても、山に行って帰ってこないとかではなく、ただ行方不明というのでは捜索は大変だろう。

範囲が絞れない。

認知症ではないらしいし、堤道をフラフラ歩いてるだけで見つかるとは思えない。

仮に認知症であったとして、認知症の人は信じられないほど遠くまで歩いて行ってしまうこともあるという。

74歳か…

今から30年後、私もそれぐらいの年代になる。

30年前の平成元年、私は希望に満ちていた。

30年後の平成最期の年、私は絶望を通り越し、諦観の境地に至っている。

そんな私に30年後の未来はどうでもいいことなのかもしれない。

私は静かに身をかがめ、素早く愛犬のお尻にビニルを当てた。

そして、30年後の未来に思いを馳せるもフラフラと堤道を歩く老人の姿が、芳しい香りにフワフワと浮かぶばかり。

ともかく、行方不明のお爺さんが早く見つかることを祈るばかり。

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